三國志 吉川英治
桃園の巻黄巾賊・一

後漢ごかん建寧けんねい元年のころ。今から約千七百八十年ほど前のことである。一人の旅人があった。腰に、一剣をいているほか、身なりはいたって見すぼらしいが、まゆひいで、くちあかく、とりわけ聡明そうめいそうなひとみや、ゆたかな頬をしていて、つねにどこかに微笑をふくみ、総じていやしげな容子ようすがなかった。

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三國志桃園の巻 / 黄巾賊・一

後漢ごかん建寧けんねい元年のころ。今から約千七百八十年ほど前のことである。一人の旅人があった。腰に、一剣をいているほか、身なりはいたって見すぼらしいが、まゆひいで、くちあかく、とりわけ聡明そうめいそうなひとみや、ゆたかな頬をしていて、つねにどこかに微笑をふくみ、総じていやしげな容子ようすがなかった。